キング様がみてる

「ヴィッセル神戸ゴゴッゴー!!」
「勝利を目指してゴゴッゴー!!」
微妙に外れた男達のコールが、西神の山々にこだまする。
キング様のお庭に集う選手たちが、今日も疲れきった表情で、プレハブ小屋の横を通り抜けていく。
幾つものクラブを渡り歩いた心身を包むのは、白黒のユニフォーム。
キング様の命令には絶対従うように、捲れた芝は自分で直すように、
黙々と練習するのがここでのたしなみ。
もちろん、開幕直前に家庭の事情で退団するなどといった、はしたない選手など存在していようはずもない。

ヴィッセル神戸。
平成七年創立のこのクラブは、もとは中内一族の税金対策のためにつくられたという、
伝統あるダイエー系オレンジサッカークラブである。
神戸郊外。バブルの面影を未だに残している研究施設の多いこの地区で、パラボラアンテナに見守られ、
日本代表クラスから元日本代表までの転落人生が体験できる産業廃棄物処分場。
時代は移り変わり、運営会社が二回も改まったミキティ体制の今日では、
各方面にオファーを出した上に、突然大物外国人選手が完全移籍で輸入される、
という仕組みが未だ残っている貴重なクラブである。